
昔から親戚等の関係を憶えるのは苦手であった。
田舎だったので特にそういうのは重要になるが、いくら説明を受けても頭の中に厚い城壁を構築し
開門するのにかなり時間がかかる。やっと憶えたとしてもすぐにどこかへ消え、名残りさえない。
そうしてまた一からやり直し。そうであるので憶える事を放棄してわかる人(家族)にその都度
こっそり聞くことにしている。(家族は私と違い、当たり前のように記憶している。)
母が認知症になり、過去の記憶がよみがえるのか親戚の名前をよく出し、よく徘徊した。
理由を聞けば彼らが呼んでいるからと。あるいは彼らがここに来るから逃げると。
彼らともう長い間あっていないはず。家族に聞いても深い関係はなく、どちらかといえば
母の両親との関係が深い。認知症になった母の頭の中はわからないが、母なりの理由があるのだろう。
認知症がさらに進行し、親戚の彼らから両親、兄弟の名前を出し、家の中を徘徊する。
(母は家族と住んでいた。私は近所に住んでおり、仕事終わりに様子を見に行っていた。
デイサービスを極端に嫌うので頭を抱えた。)
特養に空きがあり、ようやく落ち着いた。母も特養内の人たちと会話を楽しんでいるとのこと。
ひょんなことから母の兄弟と連絡が取れ、彼らと会った。
母はよくしゃべった。ちぐはぐな会話の中何度も同じことをくり返す。自分の記憶を探っている
ようだった。そこにあったはずの彼らに関する記憶。
もし私が認知症になったとしたら、親戚の名前を、家族の名前を出し、徘徊するだろうか?
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