
兄弟と介護施設に入居している母のもとへ。当面の着替えや日用品を補充。
母は会うたびに白くなっている。白髪がというわけではなく、存在というのが。
老いは加速度を増したようだ。だが外出先での昼食はぺろりと平らげるので私も兄弟も安心している。
身体も大きな不具合はないらしい。頭だけが故障している。治ればいいがと思うが無駄なことだ。
一点もので替えはないのだ。
外出すると機嫌がよくなるのか活発にしゃべってくれる。ここはどこだとか、これはなんだ?とか。
母は元気だったとき、よく友人達と旅行にいったりと活動的だったので外に出ていることが嬉しいの
かもしれない。
むしゃむしゃと昼食を平らげながら虚空に向かって語りかけ、そうして私や兄弟の方を振り向いて
ここはどこだ、という質問を食事中くりかえす。私たちも慣れてしまったので、何回目になるか
わからない回答を繰り返しながらのんびりと食事を続ける。
食後の散歩にと近くの神社を参拝。上り坂で気づく。母の足腰が思った以上に弱くなっていることに。
幼い時は山野を駆け回り、活発に動いていた母。老いた今でも施設は比較的広く、昼夜問わず歩き回っ
ているので足腰は丈夫なほうだろうと思っていたが勘違いだったようだ。
私も兄弟も呆然としてしまった。
参拝を終え、下り坂になり自然と母の手を握る。兄弟も同じ。母をはさんでゆっくりと下った。
会うたびに存在が軽く、小さくなっていく母。母を構成する粒子がさらさらと消える。
だから白く見えるのか。
コメント